前回の記事で「半導体は身の回りのいろんな製品に入っているんだな」というのは伝わったと思います。でも、ここでふと疑問に思いませんか?
「そもそも半導体って、何からどうやって作られているの?」
実はこれ、業界に入る前の自分も全く同じ疑問を持っていました。「なんとなく機械が自動で作ってくれるもの」くらいのイメージしかなかったんです。今日はその正体を、実際に製造現場で働いている立場から、できるだけかみ砕いて説明していきます。
半導体の正体は「石」だった
半導体の主な材料はシリコン(ケイ素)です。実はこのシリコン、地球の地殻の中に酸素の次に多く存在している元素で、身近な砂や石の主成分でもあります。
「え、そんなありふれたものが最先端のチップになるの?」と思いますよね。自分も最初に聞いたときは同じ反応でした。
ただし、そのままの石が使えるわけではありません。不純物を限界まで取り除き、純度99.9999999%(イレブンナイン、なんて呼ばれます)という驚異的なレベルまで精製し、さらに原子がきれいに並んだ「単結晶」という状態に育てていきます。
この塊をインゴットと呼び、それを薄くスライスしたものが「ウェハ」と呼ばれる、半導体作りの土台になります。
半導体ができるまで①:チップを作る「前工程」

ウェハの上に、電子回路のパターンを何層にも焼き付けていく作業が「前工程」です。「薄膜工程」とも呼ばれ、自分が普段携わっている「厚膜」のパッケージング工程とは扱う領域が異なります。
回路パターンを光で転写したり、不要な部分を削ったりする作業を、髪の毛よりもはるかに細かいレベルの精度で何十回、何百回と繰り返す、「クリーンルームで防塵服を着て行う作業」というイメージを持っている方も多いと思いますが、まさにそのイメージ通りの超精密な世界です。
正直に言うと、このウェハ加工の前工程は自分の専門ではなく、実際に工場見学などで間近に見た経験もないので、詳しい肌感覚までは語れないのが本音です。
半導体ができるまで②:完成品にする「後工程」はミルフィーユ作りに似ている

自分がふだん携わっているのは、この後に続く「後工程」の中でも「パッケージング」と呼ばれる工程です。ここからは実体験を交えて話せます。
前工程でできたチップは、そのままでは薄くて壊れやすく、基板にも実装できません。そこで必要になるのが、チップを保護しながら電気を通す土台に組み込む「パッケージング」の工程です。
自分の担当している厚膜セラミックパッケージの作り方は、お菓子のミルフィーユ作りに近いイメージで説明できます。
- 生地を作る:セラミックのシート(生地)を用意する
- クリームを塗る:シートに導体ペーストを印刷して回路パターンを作る(クリーム)
- 重ねて焼く:シートを何層にも積み重ねて、高温で焼き固める(積層・焼成)
- デコレーションする:表面にめっき加工を施して仕上げる
ミルフィーユも生地とクリームを何層も重ねて焼き上げますが、層がずれるとうまく重ならないですよね。半導体のパッケージも全く同じで、層がわずかにずれるだけで、後々の不良につながります。
実務エピソード:厚みが変わっただけで不良が出た話

ここで一つ、実際に自分が経験した話をさせてください。
ある時、普段よりも厚みのある製品を担当することになりました。厚みが変わるだけだから大丈夫だろうと思っていたのですが、いざ量産してみると、積層時にわずかな位置ズレが起きやすくなり、内部の配線同士が接触してしまう「ショート不良」が発生してしまったんです。
原因を調べていくと、厚みが増したことで積層時の圧力のかかり方が変わり、さらに印刷後の導体ペーストのにじみ方にも普段との違いが出ていることが分かりました。加えて、製品サイズが大きいものほど、こうした不良が起きやすい傾向も見えてきました。
ミルフィーユで例えるなら、生地が厚くなった分、クリームの塗り方や重ね方を微調整しないと崩れてしまう、そんなイメージです。
そこで積層条件と印刷条件を一つずつ見直し、改善を重ねた結果、ショート不良を減らすことができました。
「教科書通りにいかないことを、自分の手で一つずつ原因を突き止めて解決できた」という瞬間は、今でもはっきり覚えている達成感です。この仕事の面白さって、こういうところにあるんだなと実感した出来事でした。
まとめ:半導体は「ありふれた石」から「精密な積み重ね」で生まれる

半導体は、身近な石ころに近いシリコンを、気の遠くなるような精度で加工し、何層にも積み重ねてできあがるものです。
前工程でチップの回路を作り、後工程でそれを保護・実装できる形に組み上げる。どちらの工程も、地道な精度の積み重ねが求められる仕事です。
「思っていたよりも人の手と工夫が関わっている仕事なんだな」と感じてもらえたら嬉しいです。次回は、こうした製造現場で実際にどんなキャリアパス・働き方があるのか、もう少し踏み込んで紹介していきます。


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